プロらしく


 私は今でも出張着付というものをやっています。
今は年を取りましたので少し丸くなりましたが、50歳代位までは決して自分から失礼はことはしませんが、理屈に合わない事を客から言われますと、お客さんでも容赦なく言い返していました。
 前にも言いましたがお客さんは神さんでもなんでもありません、絶対の選択権があるだけですから嫌なら二度と依頼をしてくれなくていいのです。その覚悟さえあればたとえお客さんでも遠慮なく言い返せます。
 あるお客さんの話ですが、一か所終わるごとにちょっと待ってくださいといって鏡を見に行きます。
自分の気に入るように着せて欲しいからですね。その気持ちは分からないこともないのですが、鏡がその場に無いものですから一々席を外されると仕事になりません。
最初は辛抱していたのですがあまりにも頻繁ですから「仕事にならないからそんなことをされると迷惑だ」「自分で出来ないから頼んだのだから。頼んだ限りは任せらな」と叱りました。「でも心配でしょう」と言うのです。
 女性は自分のお洒落に関してはデリケートですから、美しく気に入るように着せてほしいという気持ちはわかりますが、覚悟がなさすぎます。
色々と注文を付けても腕の無い人は丁寧に仕事をしても出来上がりは大したことはありません。その人間の腕前以上の出来上がりにはならないのです、それが真理なのです。そのお客さんはそれが真理であるという事を知らないのです。
 自分で選択してしまった限りは担当者がもし下手であっても諦める以外にないのです。拙ければ二度と頼まなければいいのです。
ただそいう下手な仕事をしていれば繁栄することなく必ず潰れてしまいますので、お金を戴くこと。すなわちプロとはどういう事かという十分な認識と信条を持って仕事をするように。そのためには先ず腕を確りと磨くようにと生徒には言い続けてきました。
 例えば飲食店に入ってもこの店はこの味と接客でよく商売をやっているなぁーと感じてしまう店が多々あります。自分のつくる料理の味が客観的にみてどういう味なのか謙虚になって人に尋ねたことがあるのでしょうか。味を通してその人の人間性を疑ってしまう不味い店があります。
 美容院でもそうです。これがプロの仕事かという下手なセットしか出来ない所も少なくありません。
それでもそういう所の店主はそうは思っていいないのでしょうね。
 そういう仕事しかできない人があまりのも多すぎるからお客さんの方も疑心暗鬼になって色々と注文を付けてくるのですね。仕事をする方にプロとしての自覚と認識に欠ける人が多いのも確かです。