冥途の旅 奪衣婆(だつえば)


三途の川を渡りきると一本の木が立っています。この木は「衣領樹」(えりょうじゅ)と呼ばれています。
この木の下で爺さんと婆さんが死者が来るのを待っています。
爺さんは懸衣翁(けんえおう)と言い、婆さんは懸衣嫗(けんえおう)と言います。
この婆さんの役目は冥途の旅人の衣服をはぎ取ることです。
そのために「奪衣婆」(だつえば)とも言われています。
奪衣婆は、はぎ取った衣服を懸衣翁に渡します。懸衣翁はこれを衣領樹にかけます。
この衣領樹は旅人の生前の罪の重さをはかる木なのです。衣服をかけると罪の重さによって枝のしなりが異なる仕組みになっています。この木ではかられた罪の重さが第二法廷の証拠物件となります。
第二法廷の裁判官は初江王(しょこうおう)です。
ここでは死者の生前の殺生に付いて裁かれます。五戒の内でみだりに生き物を殺す殺生は最も重い罪に問われます。
そのあとも裁判は第三、第四、第五、第六、の裁判を経て四十九日目にいよいよ最後の裁判を受けます。
それで結審されるわけです。それが満中陰です。
最終判決がくだされますと裁判官は六道のうちのどれかを決めます。
第七の泰山王(たいせんおう)は死者に六の鳥居を示してどの鳥居に進むかを選ばせます。
どの鳥居はどの世界に通じているかはわかりません。あくまでも自分で来世を決めるのですが、この選択は前世の業による結果なので、自分んで選んだつもりでも選択肢は決まっているのです。因果応報の原理が存在しているからです。