仏教から来た言葉「乞食」


仏教語では「こつじき」と読みます。
食物を乞い求めて歩くこと、またその人のことを言います。
元来僧は物を生産する仕事の一切を禁じられていました。そこで人々の家を訪れ、鉢を捧げて施しを受けました。
これは出家した僧たちの生活手段であると同時に一つの修行でもありました。
また仏教を広めるという大切な目的にも適ったものでした。
これを「こじき」と読んだ場合は働こうとしない怠け者という意味になってしまいます。
人にすがって物をもらって生活をするという点では同じですが、その行動の基本にあるものは全く違います。
宮本武蔵の著者である吉川英治さんは本の中で僧と乞食の違いは、物乞いをするという事ではなんら変わらないが、根本的に異なることは理想を生きたか否かの違いだと書いておられます。
人の生きて行く根本目的は如何に心豊かに静安に生きて行くかということです。それを現実のものにするには欲望を消し去ることです。欲望を消滅させるには出家をする以外に術はありません。
僧の目的は人間として理想を生きるということですから吉川英治さんはそのように記されています。
本来出家する目的は理想を生きるということですが、僧も組織化され広大な寺院を維持していくには欲望を消し去るという事は難しいようで、俗化している僧も少なくないというのが現実です。