運動会の思い出


 遠足の思い出といっても行った先や友人との楽しい思い出というものは全く記憶にありません。
遠足や運動会の思い出は母の思い出です。 母はその日は暗い内から起きて巻き寿司を作ってくれました。荒野とカンピョウ三つ葉の沢山入った巻き寿司です。卵や椎茸などは入っていませんがおいしかった。そしてその時だけはみぬき(ゆでたまご)が一つ入っていました。我々の子供の頃は卵は高級品で病気になった時に栄養補給のために食べれたぐらいです。
私は病気になったことが無いので普段に卵は食べたことがありません。その卵が一つだけ入っているのです。嬉しかった美味しかった卵と巻き寿司は母の愛情の化身です。

 私の所は母が働いていたので学校の参観日は一度も来たことはありません。ところが運動会の時は早くからご座を持ってきて見やすい場所を確保して見てくれました。私は小学校の時は走るのが速かったのでその姿を見るのを楽しみにしていてくれたのだと思います。
 私が走ると張ってあるロープから身を乗り出して手を叩いて応援をしてくれました。母が来てくれる運動会は私は遠足よりも好きでした。
昼は一緒に御飯を食べて終わったら母と一緒に帰りました。帰り道で母はよく頑張ったねと頭を撫でてくれました。
今は差別問題で運動会も味気のないものになっています。

 この年になってよく想像することがあります。
それは運動会の光景です。自分もあの世に行ったら天から下界の一番よく見える場所にご座を引いて場所取りをして待っているから、「君はゆっくりゆっくり十分に下界で楽しんでからおいでや」と妻に行っている姿です。「世話になったなぁー。ありがとう。先に行っているね」そうい言って逝けたら、これほど幸せな人生はないだろうと思っています。
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