根底を見る

35年間学院長としてきもの学院を運営してきました。
多くの方がお稽古に着てくださいましたが、きちっと出来るようになって辞めて行かれた人は2〜3割りも満たないのではないでしょうか。
 そんなことはない、私はお稽古に行って浴衣が着れるようになったとおっしゃる人もおられるかもしれません。
 浴衣だけが着れたらそれでよいという人はそれで着れた事にはなりますが、着物にも洋服と同じく部屋着〜普段着〜礼盛装とあり、学院にお稽古に来る人は一通りの着付けが出来るようになりたいと希望して来られます。
 また着れるようになったといっても、その出来上がりは「下手」「普通」「上手」とあります。
現在は洋服中心の時代で、日本女性といえども着付が出来なくても恥ずかしいという時代ではありません。
 そんな時代にわざわざお稽古をするのですから、「あなたのきもの姿とても素敵ね」「私もそんな風に着れるようになりたいわ」と人から羨ましがられる御洒落が出来なければ、お稽古する値打ちが半減してしまいます。そのように好感を持ってもらえるような着付けをするには「上手」に出来るようにならなければいけません。
 よく着物を着る機会がないと皆さんおっしゃいますが、着物にも一通りありますので、着物を着る機会がないのではなく、意識的にみなさん着物を着ない時代になったということです。
 現在はおきものをお召しになる時はフォーマルばかりになってしまっているというのが現状です
 それが現実ですから浴衣や街着が着れても、フォーマルを着るときは、人に着せてもらうという事では、着れるようになったことにはなりません。
 着物が着れるという事は一通りの着物を最低でも人前に出て行っても恥ずかしくない程度の出来映えにする。それが出来て初めて着れるようになったのだと、私は着れるという事の定義付けをしています。
そういう観点から言えばお稽古に来ても出来るようになる人は2〜3割程度だということです。
 理屈をこねますと着付けぐらいで何を大仰なと反感される人も多いのですが、着付けに限らず何かに取り組んだ場合は、自分が取り組もうとしている根本目的は何か。物事に対する理解と心の整理をきちっとして取り組まなければ、直ぐに挫折してしまいます。
 何故ならばどんなものでも安易な考えで取り組んで成就するような簡単なものはないからです。
辞めて行く大半の人は覚悟と心の整理が出来ていないのです。

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