人生の目的を見直す


  般若心経の中に「色即是空」という言葉がありますが、それが教理の基本だと言われています。


 空(くう)というのは「から」「なにもない」という意味でなく、「こだわるな」という教えです。

 人は欲望が強いので様々なことにこだわります。そのこだわりがあざとなって悩みや苦しみが生じます。

 だからといって仏教の教えのように煩悩を断ち切って彼岸に達するというようなことは我々凡人にはできません。

 人は欲望の渦巻く此岸(しがん)でしか生きていくことはできません。

出来ないからこそ、少しでも良い人生を歩むには確かな論理を承知しておくことが大切です。

 論理というのは人生哲学です。

人は希望通りの人生はなかなか歩めません。悩みや苦労が多いのが人生なのですが、理屈を理解しておれば自己の心を自制したり、浄化したりすることは可能になります。思うような人生は歩めないもので、それは仕方がないとして納得できる人生だけは歩みたいものです。

 名前は忘れてしまいましたが、ある数学者の先生が、身の回りの一つ一つの事柄を哲学的にきちっと理解して置くことで人生の展望が開けるとおっしゃっています。全くその通りだと思います。

 人は自分は賢しこく何でも分かっていると思っておられますが、例えば捨てるほど衣服を持っているのに新しい服を見ると欲しくなって買ってしまいます。「何故買ってしまうのでしょう」と、改めて聞かれると即答できる人は稀にしかいません。多くの人が答えられないというのが現実です。

 全ての人は一度しかない人生ですから、有意義に充実した人生を歩みたいと希望しています。希望していながら人生は何を目的に生きているかを尋ねますと答えられない人がほとんどです。

 答えられないけど、人生を充実したいと強く思っている。その上に人間は欲望の強い動物ですから尚更に迷いの世界に入っていってしまいます。

 どんなに勉強をしても人間は悩み苦しの世界から脱することはできませんが、確かな人生哲学の理解があれば、悩みや迷いを減少させることはできますので、生きている限りは真面目に前向きに人生について考えることが重要です。

 豊かになって贅沢を知ってしまったがために、真面目に人生について考える人が少なくなっていますが、時代はどう変わろうとも人間の生きていく目的は不変です。

 不変であることが分かっておられない人が増えてきていますので、もう一度原点に返って人は「何を目的に生きているか」を見つめ直して欲しいなと何時も思っています。