頑張ることが大切

着付けが出来るようになりたいと希望してお稽古に来られても出来るようになってやめる人はごく少数だと言いました。
「君らは家に帰れば恐らく子供を捕まえて勉強をしなさい、頑張りなさい」と言っていると思います。そんな大人が着付けぐらい出来なくてどうするのですか。
 着付けなんかその気になってチョット頑張れば、直ぐに出来るようになるから等と様々に叱咤激励をしました。
 着付けの場合は学院と言ってもサービス業です。お茶もお花も踊りも全てサービス業で2月には確定申告をしなければいけません。営利目的のサービス業ですが学院、教室と名が付けば販売を目的とする商売よりも、責任感と使命感を持って頑張らなければいけません。
 着付なんか出来なくても、着物が無くても生活していく上で何の支障もないことは、生徒よりも私たちの方がよくわかっています。分かっていますがそういう問題ではないのです。
 自分でやろうと思って始めたことはやり通す意欲を持たなければ、そういうことは何にでも共通して自分の人生を無駄にしてしまうからです。

 人生とは時間です。生まれつき天才というのはごく少数で、あとは自分に与えられた時間を如何に有効に使うかという事で自分の人生の中身が決まります。
 それが分かれば着付けでも何でも自分でやろうと決めたら頑張らなければいけないのです。だけど頑張れない人の方が現実には多いのです。それが現実ですから私達は頑張らすための戦いを繰り返します。大抵はその戦いは敗北で終わるのですが、敗北しても諦めたてしまうのであれば、人から先生と呼ばれている立場を退かなければいけません。そんな情熱のない人は先生になってはいけないのです。
 そういう風に真剣に考えて取り組んでいるのですが、かたや6か月無料という学院もあります。そこは呉服を売るのです。強制ではないのですが京都の呉服屋に勉強と称して連れていかれて、逃げ出せない雰囲気のもとで勧められるのです。6か月も親切に教えて戴けば普通の人なら逃げられないでしょう。そういうシステムでテレビコマーシャルをしています。大きな利益を上げているという事です。
そこの学院に行っていた人が私の学院に来て、その話が出た時に「私は買わないで逃げ通しました」と自慢げに言うのです。
私は思わず「偉いね」というよりも「そんな人情のない人とは付き合いたくない」と言ってしまいました。
 きもの学院は月謝だけでは成り立ちません。販売をすることは致し方のない行為ですが、月謝を無料にして人を集め、勉強見学会などと称して全員を連れて行って選択の幅を狭めて販売するやり方は如何なものかと私は思っています。
 それでもテレビコマーシャルが打てるくらいに繁栄しているという事は、私には理解できない大きな魅力があるのかもしれません。