お盆のお供え


妻の田舎に行って驚いたのはお盆の仏前の御供えです。
私の家は浄土真宗で家も貧しかったのでお盆は13日に家の玄関前で迎え火の焚き火をしてその火で仏壇の線香と蝋燭に火を灯して、仏前に小さな台を置いてその台を白い布で覆ってその上に果物と野菜と御菓子を御供えするという程度のものでした。
 それも私が小学校の低学年時代の記憶の曖昧な時の事で、小学校の5年の時に尼崎に引っ越してきてからはお盆の儀礼は一切見られなくなりました。
ところが妻の家では御霊具膳(おりょうぐぜん)で立派な御供えをします。この御霊具膳を見たのは始めてです。聞くところによると浄土真宗以外は全てこの御霊具膳を使用するそうです。
 膳に飯椀に御飯を山のように盛って、汁椀は汁もの、壺椀にはあえものや豆類、平椀には煮物、高杯(たかつき)には酢の物を盛りつけてその膳を二対供えます。
その他には段盛供具や高杯には果物や御菓子や野菜を御供えします。御霊具膳は毎日新しく支度をしたものと取り替えます。
私も二日間だけ朝早くに起きて支度をして御供えの御手伝いをさせて頂きましたが大変な手間です。
大変な手間で重大な儀礼であることを姉弟達は分かっていますのでお盆には皆手伝いに帰ってきます。
 妻は5人姉弟ですがそのうち4人は帰って来ていました。
それぞれが家庭を持って分散してしまえばなかなか一同に会する機会は少ないものですが、これは伝統儀礼のなせる力だと羨ましく思いました。
 
 高齢者が何処に行ったのか分からない。家庭や家族の絆が薄れていることが問題化されていますが、これは先祖を敬うとい儀礼が疎かになって来た事が一因しているように思います。
 日本には伝統文化である様々な儀礼や行事がございます。
仏事、神事にまつわる儀礼が多いのですがそれらの一番の良さは、日頃は忙しくで疎遠に成りがちな親子、兄弟、親族達が一同に会せることではないでしょうか。
親族と言うのは五等親までを言うそうですが、広い世界で親族と言われる人達はほんの僅かです。
その僅かな人達とも仲良く出来ない世情を成ってきていますが、そういう生き方は自分の人生を豊かにすることは出来ないだろうと私は思っています。